久米島の悲運の英雄「ガサシワカチャラ」って?

14世紀〜15世紀、琉球が中国をはじめ東南アジアや朝鮮、

日本と中継ぎ貿易をして繁栄していた時代、久米島もその寄港地として栄えていました。

久米島にはその時代に活躍した悲運の英雄がいます。

その名も「笠末若茶良(ガサシワカチャラ)」

ワカチャラは、眉目秀麗、誠実で武力にも優れ、神からも久米島を導く良きリーダーになるだろうと祝福されます。

まさに、非の打ち所のない、正真正銘の英雄です。

しかし、そんな彼にも悲しい運命が待ち受けていたのでした・・・。

久米島では、彼の波瀾万丈な人生を描いた現代版組踊「月光の按司ガサシワカチャラ」が小中高校生によって演じられています。

今年は12月に沖縄タイムスビルと久米島で公演されます。

その舞台についてより深く理解するために、

当時の歴史背景や久米島に残るスポットの紹介を交えながら舞台ストーリーについてお伝えします。

 

ワカチャラにまつわる人々

伊敷索(チナハ)按司:久米島を支配していた伊敷索城の城主(イシキナワ、イチチナハとも言われる)。

久米島が中国船の寄港地で栄えているということで、沖縄本島から久米島へ渡ってきたと言われています。

宇江城(ウエグスク)按司:チナハと本妻の長男(中城とも言われる)。宇江城城跡の城主。

具志川(グシカワ)按司:チナハと本妻の次男(真仁古尊マクニダルとも言われる。)具志川城跡の城主。

笠末若茶良(ガサシワカチャラ):伊敷索と側室真牛との子。三男。登武那覇城主。

真牛:ワカチャラの母。粟国島出身。

ウナジャラ:チナハ按司の本妻。正妃。

堂の比屋:チナハ一族に使える。

ちなみに「堂」は集落名で「比屋」は役職名で、今でいう村長みたいなものだそうです。

 

 

舞台でのストーリー

琉球はグスク時代。

久米島で繁栄していたチナハ一族。

沖縄本島の首里では、三山統一、そして離島も治めたい琉球王朝の思惑が働いていました。

ワカチャラは側室の子三男。

家督争いから遠いように感じますが、才知に長け、武勇に優れ、島民からも慕われていました。

そのため首里に謀反を起こすのではないかと噂を立て、父であるチナハ按司にワカチャラの討伐を命じます。

親子の愛や人間の苦悩を織り交ぜた舞台です。

 

ワカチャラの誕生

ワカチャラの母真牛が遭難したところをチナハ按司に助けられ、久米島へ。

ほどなく子供を宿し、ワカチャラと名付けられました。

ワカチャラが生まれた後は、へその緒をソテツの下へ埋めます。

そのソテツは今もあり、ワカチャラの聖地巡礼の地と場所となっています。

個人宅の裏庭にあたるところなので、訪れる際はご在宅の方にお声掛けされると良いでしょう。

側室である真牛とワカチャラは本妻から妬ましく思われていたようですが、

チナハ按司は2人にも目をかけてくれていました。

舞台では、この本妻の態度がとても露骨に出ていますが、個人的に何故か憎めないキャラです。

長男、次男も母には頭が上がらない、という感じの演出が面白いのでそちらもぜひ楽しんでください。

 

 

ワカチャラの成人

ワカチャラも成人を迎え、城をどこに築くかという話し合いが行われます。

この時代は、城、港、村(人)の3つが重要でした。

城主の住む城は高い場所にあればあるほど権力の象徴になります。

また、良い港があれば、中国船などと貿易で栄えることができました。

そして、城を築き年貢などを納める村(人)との関係も大切だったと言われています。

しかし、ワカチャラの城は何故か高台ではなく、村から近い場所に築城されています。

3男なのであまり良い土地、良い港は与えられなかったようですが、人望の厚い人物のため、

村から近い場所に築城し、村人と協力関係にあったのかもしれません。

登武那覇城は、登武那覇公園の奥地に城跡があります。

しかし、残念ながら緑に覆われ、近くまでは近寄れません。

ワカチャラ公演で知名度を伸ばせるので、いつか整備して欲しいですね・・・。

神からも祝福のお告げを受け、若さと勢いのあるワカチャラの輝かしい時代が始まろうとしていました。

 

ワカチャラの最期

首里の命令により、愛息を討つことになったチナハ按司。

ワカチャラの母真牛を粟国島へ帰します。

息子を思い、粟国島で涙を流す真牛。

母を思い、粟国島が見える石の上で涙を流すワカチャラ。

悲しさが募るこの場面は、とても幻想的な演出がされています。

ワカチャラが泣いたとされる石は、涙石といい、こちらもワカチャラの聖地巡礼スポットです。

石にある窪みには実際にほとんど乾くことなく、水が溜まっています。

 

久米島の支配を進めるため、首里からの使者がチナハ一族を支える堂の比屋に首里につくようにけしかけます。

チナハ按司はそのようなやりとりがあるとはつゆ知らず、

愛する我が子を討たねばならないことに苦悩しながらも、ワカチャラを追い詰めていきます。

武力に優れたワカチャラは応戦しますが、それも時間の問題。

なぜ父は自分を倒そうとするのか?苦悩するワカチャラ。

とうとう対峙することになった父と息子。

父と子の悲しい心の心境がこの舞台の壮大なクライマックスです。

ワカチャラの運命、チナハ一族の運命はいかに・・・!

結末はぜひ、会場でご覧ください。

 

現代版組踊「月光の按司ガサシワカチャラ」公演日程

沖縄本島公演

日時:2023年12月9日(土) 16:00開場 16:30公演

    2023年12月10日(日) 13:30開場 14:00公演

会場:タイムスビル3階 タイムスホール

チケット:大人2,000円 高校生以下1,000円

 

久米島公演

日時:2023年12月16日(土) 昼・夜

会場:具志川農村環境改善センター

チケット:大人1,500円 高校生以下1,000円

 

お問い合わせ

久米島町教育課

住所:〒902-3121 沖縄県島尻郡久米島町字嘉手苅542番地(博物館内)

TEL:098-985-2287

FAX:098-996-2254

E-mail:kyoiku@town.kumejima.lg.jp

 

いかがでしたか?

ワカチャラにまつわる史実を元に、舞台ではエイサー演舞やダンス演出も入って、

躍動感と幻想的な雰囲気のあるとても感動的なストーリーとなっています。

踊ることが大好き、歌うことが大好きな子供達が日々練習に励んでいます。

久米島の子供達による現代版組踊「月光の按司ガサシワカチャラ」をぜひご覧ください。

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