昨年沖縄のビーチを混乱に陥らせた「軽石」。
ここ久米島にも多くの軽石が漂流し、今でもその一部が白浜にグレーのラインを残しています。
そんな厄介者扱いされる軽石をなんとか活かせないか、と取り組まれたのがやちむん土炎房の宇江城昌順さん。
軽石を焼き物に必要な「釉薬」にできないかと試行錯誤を重ね、「銘ガローシ」の器を作り上げました。
どのようにして「軽石釉薬」を作り上げたのか、実際軽石の釉薬でできた作品はどのようなものか、お伝えします。
やちむん土炎房
やちむんとは、「焼き物」のことです。
久米島の赤土にこだわり、焼き物を作られている陶芸家宇江城昌順さん。
久米島のはての浜が見渡せる山の上に工房をお持ちです。
やちむんづくり体験や、やちむんの販売もされています。
我が家でも宇江城さんのカップを愛用させて頂いております。
【やちむん土炎房】
住所:久米島町山城790-7
TEL:090-7586-6064、090-3326-2783
営業時間:9:00〜(希望の時間帯ご相談に応じられるそうです)
定休日:不定休
Facebook:https://www.facebook.com/yachimundoenbo/
Instagram:yachimundoenbo
やってきた軽石
小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が昨年8月に噴火。
その際にできた大量の軽石が2ヶ月かけて約1400キロ離れた沖縄に相次いで漂着しました。
久米島には昨年の11月ごろビーチや漁港に大量にたどり着きました。
この軽石については国や県が管理や処分を対応していますが、その対処に困っているのが現状です。
久米島でも、漁業関係者のみならず、多くの人の心を痛めていました。
それを見かねて行動を取ったのが宇江城さんです。
軽石を釉薬に使えるのではないかと試したところ、いい色が出たことから「これだ!」と可能性を感じたそうです。
そこから試行錯誤し、「ガローシ釉薬」が出来上がりました。
ガローシ釉薬とは
ガローシとは、沖縄方言で「軽石」のことです。
軽石は海水を含んでいるため、そのままでは釉薬に活用できないため、まずは塩抜きから始められたそう。
それから細かく砕く作業になりますが、実は意外と簡単には粉末にならないのだそうです。
軽石は触ると簡単に砕けるほどもろいのですが、人の手で粉末にするには4〜5日はかかります。
そうして粉末にした軽石を釉薬にして、器をつけます。
ガローシ釉薬でできた器の特徴
この「ガローシ釉薬」の特徴は、黒色の奥が深い点です。
どういうこと?って思いましたよね。
実は、一見黒色なのですが、窯出しして光を当てると色が変わって見えるのです。
軽石に含まれる成分により、同じ釉薬につけたはずなのに、
青っぽい黒、赤茶色っぽい黒、金色の強い黒というように一つ一つ違いが出ます。
そして、その成分がキラキラと光り、まるで器の中に星が散りばめられたように見えます。
漆黒の夜空に光る星のように、軽石の可能性に光を当てた素晴らしい作品です。
▼ライトを当てる前
▼ライトを当てると
どうでしょうか?違いがわかるでしょうか??
ここまでの紹介で、きっと皆さん実物をご覧になりたくなったことでしょう。
沖縄本島にいらっしゃる方に朗報です。
沖縄県立博物館にて「ガローシ御抹茶碗、ぐい飲み」が展示されています。
お近くの方はぜひ足をお運びください。
実物を手に取って見てみたい!購入したい!という方はぜひ土炎房さんにお越しください。
一つ一つの個性ある輝きを楽しめますよ。
いかがでしたか。
沖縄のビーチにはまだ軽石の面影が残っているところも多くあると思います。
それを活用しようと取り組まれた方の作品は、思いと共に美しい形となって現れています。
機会がありましたら、ぜひ美しい器をご覧ください。