あなたの知らない離島の沖縄戦「ひめゆりと久米島」

あなたの知らない離島の沖縄戦「ひめゆりと久米島」

ひめゆり平和記念資料館開館35周年記念として、「ひめゆりと久米島」の移動展示が久米島博物館にて5月31日から始まりました。

離島での開催は初めてのことだそうです。

初日にはひめゆり平和資料館の普天間朝佳館長によるギャラリートークも行われました。

展示の内容はぜひ訪れてみていただきたいですが、今回は展示に関する補足情報と展示を見ての感想をお伝えします。

沖縄戦でのひめゆりたちについて、そして久米島のひめゆりたちについてぜひ多くの方に知っていただき、

戦争と平和について考えるきっかけとなれば幸いです。

 

 

ひめゆりとは?

沖縄戦のニュースなどで、ひめゆり学徒隊の名を聞いたことがある方もいらっしゃることでしょう。

ひめゆりとは、沖縄師範学校女子部、沖縄県立第一高等女学校という二つの学校の愛称です。

13歳から19歳の生徒が学んでいました。

勉強やスポーツに打ち込み、今の子供達と変わらず青春を送っていた様子が展示写真から感じられます。

どの学生も笑顔で写真に写っており、戦争が背後に迫っていることを全く感じさせません。

 

展示の様子

展示では、「ひめゆりの沖縄戦」、「久米島出身のひめゆりの生徒たち」の二部構成となっており、

普通の女学生だったひめゆりの生徒たちが戦争に巻き込まれてしまう様子や久米島とひめゆりの関わりを知ることができます。

他にも、ひめゆりたちの証言が紹介された大型冊子や、久米島出身のひめゆり内間シマ子さんの書いた実際の手紙、アニメーションなどの展示もあります。

印象的だったのは、内間シマ子さんの手紙でした。

その手紙には、厳しい戦渦の中、友達とのたわいの無い笑いの瞬間も描かれていました。

故郷の両親を不安にさせないためなのか、それとも苦しい中でのひとときの笑いが本人たちを癒したのか、何故この時のことを手紙に残したんだろうと当時の彼女に想いを馳せました。

展示内容はひめゆりをひとくくりにすることなく、一人一人の少女の人間性や人生をも身近に感じさせるものでした。

 

 

沖縄戦のひめゆりたち

戦争が始まると、ひめゆりの生徒たちは看護助手の仕事をさせられました。

患者さんの世話や引率の先生の補佐、手術や治療の手伝いなどですが、内容はかなりハードです。

衛生環境の悪い防空壕の中、患者の汚物処理、ウジ虫処理などをします。

さらに銃弾や艦砲射撃の飛び交う中で、水汲みに行ったり、切断した手足を捨てたり、死亡した生徒を埋葬したり・・・。

それを13歳〜19歳の子にさせるというのですから、相当なストレスとプレッシャーがあったことでしょう。

散々日本兵に尽くしてきた彼女たちは、6月中旬には解散命令を受け砲弾が飛び交う中へあてもなく彷徨うことになります。

生と死が紙一重の状況だったことがよくわかる証言も展示されています。

落としたヘアピンを拾おうとかがんだ瞬間砲弾が炸裂し、自分の頭上にいた友人は撃たれて亡くなった。

足を怪我して海側から避難できないから、陸路で逃げると話した人が消息不明になった。

どの道を選べば生き残れたのか誰もわかりません。

戦争の恐ろしさを感じさせる証言が多くありました。

 

久米島出身のひめゆりたち

ひめゆりには、離島出身の学生もいました。

当時、離島から本島への進学は授業料や生活費の仕送りが必要で、親にはかなり金銭的な負担がありました。

それでも、中学校以上に進学する人はごくわずかだったため、親の期待を背負い、将来の夢や希望を抱いて進学していったようです。

戦争が近づいたことで、離島の生徒たちは島に帰っていたそうなのですが、戦争が始まると人手不足のためか生徒たちも呼び戻されることになります。

体調不良の生徒もいた中、親の反対も押し切り戦場の地へ赴くことになります。

恐ろしい戦地で、久米島出身のひめゆりの学生9名のうち5名は命を落としました。

その中には、消息不明の生徒さんもいます。

戦後になって、消息不明の娘を探した親御さんの歌も展示されていました。

いったいどのような思いで娘さんを探していたのかと、胸がキュッと引き締められました。

一方で、生き残った方も消息不明や子を亡くした親御さんに対して、

生き残ってしまって申し訳ないと感じていたという説明もあり、

互いに苦しい関係なったこともまた戦争による二次被害であると感じました。

 

「ひめゆりと久米島」を通して

戦後生き残られた方々が、このような恐ろしい体験をしたひめゆりたちについて知ってもらおうとひめゆり資料館の設立に尽力されました。

私たちが当時のことについて知る機会が得られているのはその方々のおかげです。

沖縄戦は本島のみを見聞きしており、沖縄出身者ですが恥かしながら離島の状況はあまり聞いたことがありませんでした。

もしかしたら、私のように多くの方が離島の沖縄戦について知らないのではないかと思います。

離島からもひめゆりへ進学していたことを今回の展示を通して知ることになり、

改めて沖縄戦についてもっと知る必要があるなと感じました。

沖縄戦の語り部が少なくなってきている今、このような機会は離島における平和学習にとっても大変貴重です。

ぜひ多くの方にお越しいただき、ひめゆりを通して沖縄戦、平和について考える時間を持ってもらえればと思います。

ひめゆりと久米島

開催期間:2024年5月31日(金)〜2024年6月30日(日)

開館時間:9:00~17:00(入館締切16:30)

入場料:無料

休館日:月曜日、慰霊の日(6月23日)

場所:久米島博物館(久米島町嘉手苅542)

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